Project15Vol.3デジタルマガジンで地域の魅力を発信

金沢美術工芸大学×DNPメディアクリエイト 産学連携プロジェクト
デジタル雑誌アプリ「kanavi」

2016年5月17日更新

はじめに

学生から見た地域の魅力を独自に発信

少子高齢化や人口減少といった問題に直面する日本。東京など大都市への人口流出が進む地方では、こうした問題の影響がいち早く表れることになります。人口減少による地方の「消滅」も取りざたされる中、各自治体ではさまざまな立場の人々が地域創生への取り組みを進めています。

デジタル雑誌アプリ「kanavi(カナビ)」は、金沢美術工芸大学とDNPメディアクリエイトが連携して進めるプロジェクトです。美大生ならではの“目利きの視点”で金沢を中心とする地域の魅力を取材し、スマートフォンやタブレット端末での購読に最適なコンテンツとして発信。最新号では、従来取り上げていたアート・工芸を、その地方ならではの「おもてなし」の一部としてとらえなおす試みをしています。各地の「おもてなし」を体験し、地域活性化のヒントを探る学生たちの様子をお届けします。

活動内容

老舗料亭で金沢の「おもてなし」に触れる

「kanavi」は、金沢美術工芸大学の学生たちが企画や取材、撮影、画面デザインなどを担当し、DNPグループのDNPメディアクリエイトが制作のアドバイスやアプリ開発を行うデジタルマガジンです。大きな特徴は、取材対象の選定からその取り上げ方にまで、美大生としての視点が最大限に反映されていること。伝統工芸から街中でめぐり合ったちょっと不思議なアート作品まで、「これは」と感じた情報を、ジャンルのこだわりなく取り上げています。連載企画「アートなひとさら」では、料理を単なるグルメ情報としてではなく、器を含めた「総合芸術」として扱うなど、従来の観光・地域情報メディアにはない切り口で地域文化を紹介しています。

次号の「アートなひとさら」では、料理と器をひとつの作品ととらえるこうした視点をさらに一歩押し進め、料理・器を含めた「おもてなし」の空間にスポットが当てられます。金沢独特の食文化として発展した加賀料理。そこで今回は、金沢を代表する老舗料亭「つば甚」を訪れ、女将から直々に食事の作法を教わりながら、金沢伝統の「おもてなし」を体験取材しました。

宝暦2年(1752年)の創業とされ、260年以上の歴史をもつ「つば甚」。これまでに、伊藤博文や山下清といった人が数多く足を運んできました。3人の学生が通されたのは、大正時代に作られた歴史あるお座敷。さっそく女将の鍔正美さんから「長い髪はまとめること」「膝の出る畳の縁をふまない」などといった注意を受け、学生たちの表情に緊張が走ります。

女将は厳しい言葉とともに笑いも織りまぜながら、その時々にすべきこと、してはいけないこと、そして食事の楽しみ方を教えていきます。旬の食材とその調理法によって季節の移り変わりを表現した料理と、明治時代の古九谷など貴重な器の意匠を楽しむうち、学生たちの緊張も少しずつほぐれてきました。器や食材、そして厳しい作法などについて、女将に質問しながら食事が進んでいきます。部屋の壁や障子を触らないのは、歴史ある建物にダメージを与えないため。器の蓋を裏返さずにそのまま置くのは、ふたの上部にキズが付くのを防ぐため。事細かな作法の根底にある、人や店への気づかい、器を大切にする心が見えてきます。

「お茶から発祥した作法を、基本にもっとも近い形で守っている土地のひとつが金沢です」と、女将は言います。料理を口に運ぶ順序から箸を持つ手の角度まで、細かく決められた作法は、料理を最適な形で味わい、心地よい時間を過ごすためのもの。その厳しさの一方、京都から職人を招いて技術を吸収することで焼き物や友禅などの文化を発展させてきた金沢には、さまざまなものを柔軟に受け入れる懐の深さもあるといいます。「たとえ作法をご存知なくても、日本文化が好きで、学ぶ気持ちがおありなら問題はありません。お客様に合わせた空間をご用意して、おもてなしいたします」。文化を守っていく厳しさと、文化をさらに発展させてゆく寛容さ。それらが同居する「おもてなし」の空間での会食は、学生たちにとって得難い経験となったようです。

奥能登伝統の「おもてなし」文化で地域活性化を

学生たちの関心は、時に金沢を飛び出して石川県各地にも向かいます。県内各地には、武家文化を背景とする金沢の食文化とは異なる独特の「おもてなし」が受け継がれているのです。そうしたもののひとつが、能登半島・黒川地域で古来行われてきた「ヨバレ」です。古来行われてきた「ヨバレ」とは、祭礼などの際、それぞれの家庭が親戚や友人知人を招いてもてなすことです。この風習を地域活性化の手段として活用できないかと考えたのが、県の文化財である天領庄屋「中谷家」の当代当主である中谷直之さんです。昔から庄屋として地域のまとめ役であった中谷家の末裔である直之さん。現代庄屋の役割として地域活性化に活用することを思いついたそうです。従来の会食に地域の文化体験などを絡め、県内や首都圏から招いた人と地域住民との交流プログラムとして復活した「ヨバレ」を、学生たちも体験しました。

中谷家を会場に行われた今回の「ヨバレ」では、地域住民と石川工業高等専門学校村田ゼミと金沢美術工芸大学の学生が協力しての食事づくりや近隣に生える竹を使用した食器づくり、さらには地域の祭礼への参加など、参加者はお客様としてもてなされるだけでなく、より深く地域文化に触れるための催しが多数行われました。中でも今回の「ヨバレ」の大きな特色となったのが、輪島漆器の手入れと、その漆器を使用した食事体験でした。中谷家の蔵に眠っている大量の漆器に目を付けた中谷さんは、現在は使うことの少ない漆器に触れる機会として体験プログラムを企画。参加者たちは、輪島塗の扱い方などのレクチャーを受けたあと、保存状態のよくなかった漆器を丁寧に手入れし、実際にその器で地域の郷土料理を味わいました。地方独特の生活や文化に触れ、その場でしかできない体験をした学生たち。「ヨバレ」を楽しむとともに、その体験を読者にどう伝えていくかということを考える契機にもなったようです。

まとめ

人と人とをつなぐ橋渡し役としてのデジタルマガジンへ

体験型の取材で、今回訪れた地域の魅力をじかに感じた「kanavi」取材チーム。一見何もないような場所でも、実際に足を踏み入れると、既存のメディアには触れられていない魅力が詰まっていることが分かります。体験によって得た情報を、どのようにして第三者に伝えるか。そうした課題も浮かんできたようです。

北陸新幹線の開業により、観光客の増加する北陸地方。そして、東京オリンピック・パラリンピックの開催決定もあって、海外の日本に対する注目はますます高まっています。人の行き来が活発化する中で、まだ知られていない地域の情報を発信し、外から来る人々と地域に暮らす人々をつなげていく。そうした役割が「kanavi」に期待されています。

金沢市のアートと生活工芸を紹介するデジタルマガジン『kanavi(カナビ)』は下記サイトで確認いただけます。

kanavi公式サイト

ニュースリリース|金沢美術工芸大学とDNPメディアクリエイト “目利きの視点”で金沢のアートと生活工芸を紹介するデジタル雑誌アプリを配信
http://www.dnp.co.jp/news/10099507_2482.html

DNP 大日本印刷は、皆さまが暮らす地域の未来をよりよいものにするために、 地域の魅力づくりのお手伝いをしています。ぜひご相談ください。

 

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