Project18未来の書店では本棚に話しかけられる?

市谷の學校×出版甲子園「書店プロモーションワークショップ」

2014年11月25日更新

はじめに

本と人をもう一度、結びつける

ネットで本を買うということが一般的になる一方、街の本屋さんに足を運ぶ回数は減っている…。きっと誰にでも身に覚えのあることではないでしょうか?しかし、最近では大型書店の盛り上がりや、専門分野に特化した書店の誕生など、本好きならずとも心が躍る「本との出会い」を演出する書店が目立ってきました。「本」それ自体も電子化したり、アトラクション化したりとカタチを変えている中、人々を振り向かせる「未来の本との出会い方」つまり未来の書店について、今こそ考えていく必要があります。今回は出版業界を志し、熱い野望を内に秘めた大学生たちと一緒に未来の書店のあたりまえを探っていきます。

活動内容

若いアイデアが未来の種!きっかけで未来は生まれる

2014年9月26日、コミュニケーションプラザ ドットDNPで開催された出版業界を目指す大学生の登竜門「出版甲子園」と「市谷の學校」のタイアップイベントが開催されました。市谷の學校は、プロの編集者向けに、編集ノウハウを伝授するという不定期でDNPが開催しているセミナーです。今回は就職活動を控えた大学生に向けて構成されたスペシャルワークショップ。課題図書を街の書店で目標冊数、販売することができる、新たなプロモーション方法を企画し、プレゼンテーションしてもらいました。

集まった20名の大学生たちは、4つのグループに分かれます。今回のパートナー、numabooksの内沼さんから「仕事にしてしまうとできないことがたくさんあります。学生らしい、学生にしかできない企画を期待しています」とメッセージをいただき、早速ワークショップ開始!司会進行役はこのワークショップの企画を立案したDNPの土師(はし)さんです。まずは頭のウォーミングアップ。4冊の課題図書のうちいずれか1冊を取り上げ、そこから導き出されるキーワードを書きだします。『京大院生が書いた イメージでつながる英熟語』なら、「海外旅行」「受験」など。さらに「学生ならでは」のキーワードも対になるように書き込み、その2つのキーワードの掛け合わせからプロモーション方法のアイデアを絞り出していきます。骨のあるブレインストーミングに学生たちも熱意で応えていきます。

頭にエンジンがかかったところで、企画開始です!DNPの若手社員も各グループにオブザーバーとして参加します。与えられた課題は「丸善お茶の水店で2週間で100冊売るための施策」を考えよ、というもの。秀逸な企画は実際に丸善お茶の水店で実証実験されるという、大学生には夢のような舞台が用意されました。各テーブルでは和気あいあいと議論が進み、学生たちもオブザーバーの意見を参考に案を練り上げていきます。大学生と社会人が立場の垣根を越えてアイデアをぶつけあうことができる。こういった機会こそが「未来のあたりまえ」の種になると、ひしひしと感じさせられました。

止まらないアイデアを何とかA4サイズのプレゼンシートにまとめて、いよいよ全体発表です。やはり学生たちのアイデアならでは、少しくすっとさせられるような仕掛けから、普段よく書店を見ているな、と感じさせる施策まで色とりどりの内容でした。『京大院生が書いた イメージでつながる英熟語』を課題図書に選んだチーム。御茶ノ水という地域の特徴を活かして、予備校生にターゲットを設定。店内のいたるところにPOPを設置し、棚と棚の間を「通り抜ける」瞬間だけ「通る」の英語である「through」という英単語が目に飛びこんでくるなど、来店者の書店内での行動に連動したプロモーション企画が目玉でした。

また『凡人内定戦略』を選んだチームは、「凡人」という語感の強い単語に着目。店頭に設置したサイネージの前を来店者が通ると「おい、そこのお前、お前は凡人だ!」と呼び止められるという、アトラクションのようなアイデアも飛び出しました。やはり同じ学生視点だからこそ、どうアピールすれば手に取ってくれるのかを深く考えられたようです。また、他のチームも芸能人を呼んでトークショーを行う、大掛かりなタイアップイベントを行うなど、複数のしかけを連動させてプロモーションするという案が多くあがりました。プレゼンが終わってほっと一息、充実感あふれる表情を浮かべる面々は、内沼さんの講評を待ちます。

休憩を挟んで、すべてのプレゼンをメモを細かくとりながら聞いていた内沼さんから講評をいただきます。まずは総評です。「予算や利益についてもっと踏み込んで考えてもらえたら更によかったと思います。また、もうすこし時間があれば『学生じゃないとできない』という点を深く掘り下げてみてもよかったかもしれない」というすこし辛口の総評。ただ大人が学ぶべき点もあったようです。「店舗という空間を最大限に活かしたしかけなど、驚かされながらも感心させられるアイデアもありましたね」。学生たちは一言一言を大事そうにノートに書きとっていきます。

また、個別の講評ではよりよくするためのアドバイスもいただきました。「書店と消費者だけではなく、イベントを企画するときは関係者全員にメリットがあることが前提になります」「ターゲットの設定をもっと突き詰めてもよかったかも」と具体的な改善策が次々と出てきます。さらに学生からも呼応するように「社会人が思う学生らしさとはどういうものなのでしょう?」などの質問が飛び交いました。具体的な販売目標に対してプロモーション戦略を制限時間内に考えるという、まさに出版業界人の仕事の一端を垣間見れた今回のイベント。学生たちも実践的なワークショップを通じて、未来のあたりまえを考えるきっかけになったのではないでしょうか?

内沼さんは今回のイベント振り返りながら、未来の出版業界人についてこのように語ってくれました。「今回は、未来の出版に携わるであろう大学生が主役のイベントでした。彼らにはワークショップを通して『本の売り方』を考えてもらったのですが、今の時代、紙の本や電子書籍など、いろいろなかたちでコンテンツに触れることができます。そうした多様性は、出版の未来を豊かにしてくれると思うし、特に学生の方には、そういった多様性に対して『ワクワク』できる人であってほしいですね。」まさに今、激変の時代の中にある出版業界。どんなカタチになるのかさえ誰もわからない今、学生たちも、社会人である私たちもあらためて、未来を考える大切さを今回のイベントを通して感じることができました。

まとめ

未来のあたりまえを生み出すチャンスを学生に

今回のイベント企画・運営を指揮したDNPの土師さんはこう振り返ります。「学生ならでは、というところが一番のポイントでした。なるべく制限をかけず、自由に発想してもらえるようなワークショップフローを、内沼さんに相談しながら練り上げていきました。短い時間でしたが学生の発想力には驚かされましたね。今後はさらに参加者の幅も広げ、出版社も巻き込みながらイベント化していきたいと思っています。若い力を引き出して、出版業界に昇華していく、そのハブ的な役割を担えるのがDNPだと思っているので、さらにパワーアップさせていきたいです」。また、イベントを通して未来の本との出会い方についても思いを巡らせたとのこと。「『紙の本』は、もちろん『情報を伝える』という役割が大きいですが、『生活をもっと豊かにする』という役割もあるのだと思います。未来は書店以外でも本を手に取る機会が増えたり、生活の中で本が果たす役割自体も変化していくのかもしれませんね」。

市谷の學校の推進役であるDNPの村さんにも未来の本との出会い方について伺いました。「本を手に取ってもらえる環境、それが紙であれ電子であれ、その環境を増やすことが第一だと考えています」。今回のワークショップはDNPにとっても初めての取り組みであり、ワークショップの運営や課題の設定も試行錯誤の中行われました。課題や改善点もたくさんあります。しかし、未来を考えるチャンスから次の未来のあたりまえが生まれるかもしれないという可能性を感じたことも事実。DNPではこのワークショップ自体をブラッシュアップさせながら、未来の書店のあたりまえをこれからも継続的に考えていきます。

 

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