Project19グランプリは「演出できる本」!?

日本経済新聞社主催「未来の夢・アイデアコンテスト」

2015年1月13日更新

はじめに

刺激的なアイデアがたくさん!未来の本ってどんなだろう?

電子書籍という本のカタチの認知度も向上しつつある昨今、本を読むという行為も、紙の本しか無かった時代と比べてずいぶんと様変わりしました。電車の中でスマートフォンをじっと見つめている人、タブレット端末をせわしなく操作している人。もしかしたら「読書中」なのかもしれません。本と人との間にあるコミュニケーションが目まぐるしく変化している中、DNPもハイブリット型書店サービス「honto」をはじめ、いろいろな「未来の本のカタチ」を模索しています。今回は学生たちの柔軟な思考で、「未来の本」が生み出すコミュニケーションを考えてもらいました。

活動内容

日本経済新聞社主催「未来の夢・アイデアコンテスト」。DNPはこのコンテストに4年前より協賛しています。この最終審査会が11月20日(木)、東京都品川区の「DNP五反田ビル」で開催されました。学生たちはDNPからのお題「未来の本のカタチ〜次世代の情報コミュニケーションを考える〜」を描いたアイデアシートを事前に提出し、一次審査を経て、最終審査会にまで勝ち進んだのは応募総数68組の中から選ばれた8組の高等専門学校生、大学生、大学院生たちです。単なる夢の話に留まらない、有用性や実現可能性を視野に入れたビジネスモデルのプレゼンテーションになりました。

審査員は普段から「未来の本」について考え続けているDNPの社員たち。DNPが展開するハイブリッド型書店サービスを手がけるhontoビジネス本部の中川さんは、最終審査会のはじめに「我々は技術屋として研究に取り組み、なおかつ、マーケットのニーズも鑑みてビジネスにしてきた反面、思考が凝り固まってしまっているところもある。今日はみなさんのやわらかいアイデアを期待しています」と挨拶。さあ、いよいよプレゼンテーションのスタートです。

まずは前半4組の発表。2組目の東北大学大学院のチーム「earth」は「参考書とAR技術による覚え書きの共有」をテーマに、クラウド技術とAR技術を用いて、スマートフォンやタブレットを参考書にかざすことで、覚え書きや質問の書き込み、閲覧もできるというシステムを提案。参考書に記した解き方・考え方の覚え書きをユーザー同士が共有することで、集団としての学力向上を図ります。「いい書き込みには評価もできるので、情報の信憑性にもつながります」と発表者は胸を張りました。審査員からは「ビジネスとしてどのような拡大を見込めますか?」など、ビジネス化という点に着目した質問が多くあがります。未来の本とは未来の出版業界を描くこと。ビジネスにしたときの道筋をたてることも、未来のあたりまえをつくる上ではとても重要です。

今回の最終審査会の最年少参加者は、熊本高等専門学校3年生の坂田慧梧さん。「未来の絵本」をテーマに、「お絵かき」された景色や動物たちに動き、音、物語をアシストして「動く絵本」を作成するシステムを提案しました。電子端末に描かれた絵から、色や形状、キャラクターの表情などを読み取ります。さらに、お絵かき中に発した会話や音(オノマトペ)などの情報も加えて、自動的に物語を構築。これにより言語能力の乏しい幼児でも、ストーリーを持つ絵本を作成することが可能になります。審査員からは「18才にして子どものためのサービスという発想が出たという点に驚いた」という声もあがりました。学生と意見を交わすことは、普段仕事の中ではなかなか体験しないこと。時に、若い力と一緒になって未来を考えることが、私たち社会人にとっては大切なのかもしれないと気付かされる瞬間でした。

その後、後半4組のプレゼンテーションが終わり、懇親会の中で審査結果が発表されました。最優秀賞に輝いたのはお茶の水女子大学の「Team ボルボックス」。メガネ型のウェアラブルデバイスを活用して、紙の書籍の上に映像や音声による演出ができるという仕組みを提案。読んでいる場面に合った背景や音声の演出効果によって、臨場感あふれる読書体験を提供します。「豊かな読書体験」の手助けとなり、新たな読者層獲得につながる可能性が受賞の決め手となりました。また、将来“本の演出家”という新たな職業が生まれるかもしれないという、まさに新たな本のカタチを示したアイデアでした。
審査員からは「どれも非常に素晴らしかった。優劣つけがたく、全て入賞にしたらいいんじゃないかという意見も出た」という総評もありました。

日経テクノルネサンス・ジャパン事務局 横田浩一さんは昨年とのコンテストを比較し、「学生のプレゼン能力、特にパワーポイント能力の向上はめざましいですね。今回は『本』という身近なテーマだったこともあり、技術面よりも、『既存の技術を組み合わせたら、どんなことができるか』という幅広い用途提案・ビジネスモデル提案の要素が大きかったと思います。だからこそ、理系・技術系以外の学生の参加につながったのでしょう。特に女性の参加が増えたのも象徴的でした。アイデアとしては、『こんなことができたらいいな』という観点で、実体験からの発想が多かったですが、もっと社会的課題からのアプローチがあってもよかったかなと思いました」という意見を聞かせてくれました。

一次審査で審査員を務めたDNPの中島さんもこう語ります。「未来の本=電子書籍として捉えられてしまいがちですが、紙の本も忘れてはいけないと思っています。最終審査に残ったチームの中にも、紙の本に新たな役割を与えるような提案も多くありましたよね。そんな既存のバリューチェーンから飛び出した豊かな読書体験を探ることこそが、未来の本のカタチをつくっていくときには必要不可欠なんです」。

まとめ

新しいコミュニケーションが見えてきた

未来の本のカタチというテーマに対して、自身の経験をもとに、想像の翼を広げ、そこからさまざまな未来のアイデアを生み出した8組の学生たち。今回の発表で特徴的だったのは、「新しい技術の開発」ではなく、すでに世の中で誰もが気軽に導入できるようになった技術を組み合わせ、新しいビジネスモデルを本の領域で創りだすアイデアが多かった点です。「未来の本」について考えるときに、企業の中だけで解決しようとするのではなく、企業と学生たちが一緒になって考えることで、新たなカタチがきっと生まれるでしょう。

参考資料

LERTシステム企画書(PDF)をダウンロード

最優秀賞
お茶の水女子大学 生活科学部 人間・環境科学科
チーム名:Team ボルボックス

ウェアラブル機器とAR技術を利用した、新しい読書の提案。それが“LERT(Let's Enjoy Reading Together)システム”です。 専用の眼鏡型ウェアラブル機器“LERTグラス”を使用して読書をすることで、本を認識し、AR技術で本の上に表示された演出のなかから好きなものを選ぶことができます。読んでいる場面に合った背景や音声の演出効果によって、臨場感あふれる読書体験を提供します。また、読書体験を共有することで、多くの人と一緒に一つの作品を楽しんでいるという一体感を味わうことができます。

DropBooks ~落として拾って繋がって~企画書(PDF)をダウンロード

優秀賞
東京工業大学大学院 理工学研究科 機械制御システム専攻
チーム名:Team めがねーず(仮)

紙のアナログとしての唯一性とデジタルデバイスの利便性を融合した「DropBooks」。
システムの根幹をなすテーマは、“落として拾う”と“らくがき”。
電子書籍を好きな場所で落としたり(アップロード)、拾ったり(ダウンロード)することで「本との偶然の出会い」、また、電子書籍にメモやイラストを書き込めることで「手書きを通じたコミュニケーション」を提供します。

HaKuShe企画書(PDF)をダウンロード

優良賞
京都大学大学院 情報学研究科 知能情報学専攻
同志社大学 社会学部 産業関係学科
チーム名:鴨川アンダーザブリッジ

「HaKuShe」は拡張可能な複数枚の電子ペーパーを内蔵したタブレット端末。
従来の紙の本が持つ質感やめくる楽しさと、電子書籍の手軽さや情報量の多さ、どちらも兼ね備えた画期的なアイテムです。電子ペーパーは取り外しも可能。お気に入りの記事をスクラップしたり、アルバムのようにみんなで写真を眺めたり、用途は無限に広がります。

絵本作成アシストシステム

審査員特別賞
熊本高等専門学校 制御情報システム工学科
坂田 慧梧

「お絵かき」された景色や動物たちに、動き、音、物語をアシストして「動く絵本」を作成するシステム。電子端末に描かれた絵から、色や形状、キャラクターの表情などを読み取ります。さらに、お絵かき中に発した会話や音(オノマトペ)などの情報も加えて、自動的に物語を構築。これにより言語能力の乏しい幼児でも、ストーリーを持つ絵本を作成することが可能になります。

meet ~本との出会い、人との出会い~

お茶の水女子大学 生活科学部 人間・環境科学科
チーム名:The Girls☆

「本×旅~物語の世界観を巡る旅~」をコンセプトに、場所に特化した検索アプリケーション「meet」。検索方法は、「本から場所」、「場所から本」、「場所から場所」。好きな本と似た世界観の本や、舞台となった場所が簡単に探せます。また旅行会社とリンクし、旅のプランも提案することで、出版業界だけでなく、旅行業界の活性化も望めます。

「わかった!」を共有する未来型参考書

東北大学大学院 工学部 工学研究科 航空宇宙工学専攻
チーム名:earth

テーマは「参考書とAR技術による覚え書きの共有」。参考書に記した解き方・考え方の覚え書きを、ユーザー同士共有することで、集団としての学力向上を図ります。 クラウド技術とARF技術を用いて、デバイスを参考書にかざすことで、覚え書きや質問の書き込みや閲覧ができるシステム。いい書き込みには評価もできるので、情報の信憑性にもつながります。

閉空間

東京工業大学大学院 理工学研究科 機械制御システム専攻
チーム名:肉屋弁当LOVER’s

紙の本にも電子書籍にも共通なのは、「手を使わないと次のページに進めない」ということ。そこで、目を閉じるだけで「手を使わずに読むことができる」本のカタチを提案します。それは、まぶたにデバイスを配置、網膜に映像を投影し、さらに舌の動きでページを操作するというもの。さまざまな状況下での安全・快適な読書を、技術面から追求していきます。また障がいがある方も、読書が可能になります。

Active Reader

千葉大学大学院 工学研究科 共生応用化学専攻
チーム名:チームA

移動中、読みかけの本の続きが気になって「歩きながら読めたらいいのに!」 そんな切なる願いから考え出されたのが、この「Active Reader」。 利用者がメガネ型のデバイスを通して見ると、実際の景色の中に文章が表示され、あたかも看板や広告の文字を読むような感覚で、読書を楽しむことができるというもの。 読書可能なシチュエーションが増えることで、新たな読書スタイルを提案します。

 

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