Project26未来の図書館は本の楽しさをシェアする空間になる?

本のあり方が変わっていく!?
「デジタル絵本でおはなし会」で感じる未来の図書館

2015年4月13日更新

はじめに

電子書籍を知ることで、これからの図書館の姿が見えてくる?

電子書籍は今では生活にかなり浸透し、珍しいものではなくなってきましたが、それが図書館にも導入されると、これからの図書館はどうなっていくのでしょうか?札幌市中央図書館は過去に市民400人を対象に電子書籍のモニター実験を行ったところ、対象書籍の中に一冊だけ含まれていた「デジタル絵本」に対して「家族みんなで一緒に見られていいね」、「出産前なので、図書館に行かなくても楽しめるのは助かる」という声が寄せられました。絵本は文字だけの本に比べて伝えられる要素が多く、デジタル化する上で効果が感じられやすいという判断から、絵本で定番の読み聞かせをデジタル絵本で行うことを発案。皆に集まってもらうことで、図書館での電子化のメリットを体感してもらおうという事で、「デジタル絵本でおはなし会」を2015年2月に開催しました。

活動内容

一つ目のお話は『ぬいぐるみおとまりかい』。みんなの大切な縫いぐるみが図書館に泊まって建物を探検したり、読み聞かせをしてもらうというお話です。この絵本は、紙の絵本をそのまま(静止画)でスクリーンに映し、それを見ながら生のお話をするというシンプルなパターン。電子紙芝居と言ってもいいかもしれません。大きな画面には鮮明に絵本の内容が映し出され、子どもたちは食い入るようにじっと見入っていました。

二つ目は『ごろりんごろんころろろろ』。仕事が大好きなウサギさんが、仲間のロバさん、キツネさん、10匹のリスさんたちのためにテーブルと椅子をつくり、みんながそこに集まって思い思いに楽しむというお話です。絵本にはBGMが入り、読み聞かせのとおりの言葉がテロップで表示されたほか、耳やしっぽが少しだけ動くというもの。それを観て、「絵本が動いた!」と反応する子どもの声も聞こえてきました。

三つ目のお話は、絵のタッチが個性的な『うえへまいりまぁす』。婦人服・紳士服からおすもう、忍者、地獄、神様など奇想天外な売場でお父さん、お母さん、主人公が横綱や閻魔大王や自由の女神を買うという、自由で壮大なお話です。この絵本にはBGMのほか、読み聞かせの声、エレベーターの扉の閉まる効果音や、絵が大きくなったりといった視覚効果も盛り込まれています。お話そのものが、意外性があっておもしろく、「お母さんはお特用七福神詰め合わせを買った」などのセリフには、子どもたちよりも、お母さんたちの笑い声が聞こえました。ナレーションの「うえへまいりまぁす♪」というセリフをまねしている子もいました。

最後のお話は『ぴっけやまのおならくらべ』。ぴっけやまという山の住人のネズミ、熊、鶴、イタチは普段から、くらべっこをして遊んでいましたが、今回はおならくらべをするというお話。それぞれが、渾身のおならを披露したあと、それを吸ったぴっけやまが、大きなおならをして、一番になります。BGMが入り、絵(主におならのようす)が動く絵に合わせて、男女2名で読み聞かせをしました。女性がナレーション、男性がそれぞれの動物のセリフを話し、演劇を観ているような雰囲気が感じられました。このお話も、子どもたちは静かに見入っていて、集中している様子がうかがえました。

「子どもと一緒になっておはなしに引き込まれました」

「デジタル絵本でおはなし会」に参加したお母さんに感想をうかがいました。
「たまたま図書館に来てみたら、この会のお知らせがあったのですぐ申し込みました。図書館の読み聞かせにも何度か参加していて、子どもも楽しんでいましたが、図書館が家から少し離れているので、時々しか来られません。図書館の電子書籍のことは以前から知っていましたが、こういうものをダウンロードできて自宅のテレビでも観られるようになれば、ぜひ今日のような読み聞かせをしてみたいと思いました。今回のおはなし会は、お話はほとんどが生の声で、そのせいかアニメを見るよりもストーリーに惹き付けられました。子どもはもちろん、大人も一緒に楽しんでいたのではないでしょうか」。

「電子書籍のあり方を考えるきっかけにもなりました」

4種類のデジタル絵本で行われた「デジタル絵本でおはなし会」。この催しを開催したのには、絵本を題材にして電子書籍の可能性や役割を探ってみたかったからと、札幌市中央図書館の浅野さんは話します。「絵本は視覚的な表現なので、電子化によって読み方が多彩になり、紙の絵本とはひと味違う魅力が出てくるのではないかと考えていて、ずっとやりたかった企画です。ITのメリットは言葉で話してもわかりにくいので、今日のように体感してもらう方が効果をわかってもらいやすいと考えていました」。

「デジタル絵本を広めるきっかけにもなりますね」

今回のデジタル絵本の読み聞かせには、予想以上の発見があったと話すのは、図書館の各種サービスをサポートする株式会社図書館流通センターの元吉さん。「お父さんの膝から離れ、前に出て食いいるように画面を観るなど、子どもたちが集中して楽しんでいたのが印象的でした。図書館の電子化のメリットをこういったおはなし会を通じて実感していただくということがこれまであまりありませんでしたが、こうした活動で自然と知ってもらうというのはとても有意義だと思います」と手ごたえを感じている様子でした。

「本のデジタル化を広めるのも図書館の役割だと思います」

「デジタル化された絵本のおはなし会は、映画の上映会のようにも見えますが、そこには対面で反応を見ながら話すという大きな違いがある」とDNPの花田さんはコメントします。「読み手として参加しましたが、子どもたちの表情が見え、子どもたちも読み手を見てくれて、笑ってくれる。〝読み聞かせ〟のメリットはデジタルになっても変わらないんだな、という印象を強くしました」。ただ、絵本ならではの難しさもあるそうです。「絵本、児童書は作者の方が強い思い入れをもっているので、デジタル化に賛成してもらうのが難しいこともあります。だからこそ今日のような読み聞かせを行い、その良さを伝えていくとともにデジタル化への理解を広げるのもこれからの図書館の役割ではないかと感じています」。

まとめ

今回の「デジタル絵本でおはなし会」では、デジタルコンテンツならではのアクションや効果音、音声によってより効果的に作品の世界感を大画面で大勢で共に楽しむことができるという、図書館の新たな可能性を見つけることができました。

図書館が電子化すれば、遠方の方でも簡単に本を借りられるようになるというメリットとともに、これまでは「個人が本を楽しむための空間」だった図書館が、「みんなで本を楽しみシェアする空間」という新しい役割を持つようになる日もそう遠くはないかもしれません。

 

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