Project36観光客誘致の取組みが、地域のコミュニケーションを変える

「富士山じかん」アプリ開発を通して広がるコミュニケーション。富士吉田市の街づくり

2016年5月17日更新

はじめに

アプリを使った「街づくり」にはどんな結果が現れたのか?

かつてのにぎやかな街並みが今はシャッター商店街に。地方都市ではよく見る風景であり、地域活性化を図る「街づくり」は全国共通の課題です。富士吉田市も、抱える悩みは同様で、「観光客が通り過ぎる街」という課題に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスとともに取り組んできました。今回、このプロジェクトにDNPも参加し、O2Oアプリ「富士山じかん2.0」を開発。夏にはアプリを使った富士登山スタンプラリーも、地域を巻き込んだ形で開催されました。今回、このアプリ開発までの経緯について教えていただき、街づくりのヒントを探してきました。
※O2O・・・Online to Offlineの頭文字を取ったもので、インターネット(オンライン)上の活動を実店舗(オフライン)の販売促進に結び付ける事を意味します。

活動内容

通過される街を何とかしたい!

富士吉田市はかつては織物産業で栄えていましたが、現在は当時ほどの勢いはありません。観光資源としての富士山は、観光客をこの地に招きますが、富士吉田市は通過されがちで、観光都市としての魅力の発掘が目下の課題でした。そこで2007年に山梨県・富士吉田市・慶應義塾大学の三者間で地域の魅力を発掘するための連携協定を締結、慶應義塾の学生が現地を訪れ、富士吉田市の観光資源を調査研究するスタディツアーを行ってきました。

地域の情報を書いたカードから街づくりの取組みは始まった

このスタディツアーを通じて提案された施策の一つが、地域の食文化のブランディングを目指す「吉田ごはんプロジェクト」。富士吉田市のご当地メニューに着目し、地域の食材を使ったメニュー開発やイベントへの出店を通じて地域の魅力をPRしようという活動です。このプロジェクトで作成した、市内の飲食店の魅力を記載したポストカードは、市内の観光拠点などに設置され、話題となりました。その後、慶應義塾大学の学生として調査研究に携わっていた齋藤萌さんが「富士吉田地域おこし協力隊」に就任、研究スタッフの齊藤智彦さんが「富士吉田みんなの貯金箱財団」を立ち上げ、富士吉田市での街づくりの取組みが本格的にスタートします。この後に「吉田ごはん」の発展形として飲食店以外の店舗情報も追加されたカード型の「吉田じかん」が発表され、より内容を充実させた「富士山じかん」へと発展していきました。

「『吉田じかん』『富士山じかん』のカードを開発したことで、オフラインの環境は整備されていきましたが、周遊支援をより促進させるにはO2Oが有用だと考え、アプリ版『富士山じかん』を開発しました。」(齋藤萌さん)
開発された、iOS版の「富士山じかん(ver1.0)」は、写真と地図を使った直感的なナビゲーションで、富士吉田・富士北麓地域の「ここにしかない時間」を体感できる数多くのスポットを紹介。また、お勧めの周遊コースや各種イベントの紹介も含めたアプリとしてリリースされました。
※「富士山じかん」の詳しい内容はこちら

DNPが担当したver2.0では、スタンプラリーやスマートフォン上に「お知らせ」を表示させるプッシュ通知、多言語対応など機能を拡張。さらにAndroid版を開発し、利用者の増加に貢献しました。スタンプラリー機能は、2015年夏の富士山の登山道に設置されたスタンプを集めるキャンペーンに活用されました。また、地域に設置された「Beacon内蔵貯金箱」からの通知で地域情報を得られる仕組みも開発するなど、「富士山じかん」の用途は多様化されていきました。
※実際にスタンプラリーを体験してきた、DNPの広報キャラクターDNPenguinの様子はこちらのFacebookページをご覧ください。

「富士山じかん」アプリによって、地域の人々の対話が増えた

アプリ開発後の反響について、齊藤智彦さん(富士吉田みんなの貯金箱財団)は次のように話しています。

「2015年の夏、登山者を対象にスタンプラリーのキャンペーンを実施した結果、麓から富士山に登る人が増えました。アプリを通じて観光客の皆さんに新しい魅力を提供できたということではないかと思います。また、アプリは多言語対応しているので、増加する外国人旅行者の方たちにも利用していただいています」

続けて、「さらに、大きな収獲がありました」と語る齋藤さん。

「このアプリは、富士吉田市内の周遊支援を目的に開発されましたが、その要望を聞くプロセスにおいて、地域の方々同士のコミュニケーションが活発になるという状況が生まれました。これまでよりも地域内での住人同士の対話が増えたのです」

ここで注目すべき点は、「富士山じかん」アプリの開発の過程で、地域の人々が能動的に行動するようになっていったということ。地域の課題の「自分事」化が、みんなで地域の魅力を発信しようという機運へとつながり、地域のインナーブランディング効果をもたらしたということです。全国の自治体が「地域おこし」を考える際にも、大いに参考になる事例ではないでしょうか。

簡単な操作で地域情報のプラットフォーム化を促進

齋藤萌さんは、アプリを通じて「地域情報のプラットフォーム化」が始まっていると指摘します。

「『富士山じかん』に集まった情報は、観光客の方だけでなく、富士吉田市の方々も自身のWebサイトに活用したりしています。今後も地元の方々が富士吉田市をPRする時の素材としてどんどん活用していただけるように、情報を整備していきたいと思います」

「富士山じかん」が地域内で浸透した背景には、アプリの機能拡張の際に十分な配慮があったことにも注目しなければなりません。

「アプリに搭載する情報は、富士吉田の方々に更新していただくことになりますので、簡単に操作できるように、設計に配慮してプログラム開発を行いました」(DNP 鈴木さん)

地域発の「観光まちづくり」を支援していきたい

齊藤智彦さんは、「富士山じかん」の今後の展望について、次のように語ります。

「今回リリースされたアプリが完成ではなく、このアプリをたたき台として、『今後どうしていきたいのか』をテーマに、地域の方たちと議論を深めていくと、また富士吉田市の新たな魅力が発見できそうな気がしています」

アプリの開発に携わったDNPの鈴木さんは、「富士山じかん」の今後の可能性について、次のように話しています。

「アプリ利用データと利用者の周遊データも蓄積されるので、こうした情報に基づいた展開も視野に入れています。地域の人たちとアプリの今後を議論するのは大賛成。DNPも技術面、マーケティング面で最大限のサポートをしていきたいと思います」

着地型観光と呼ばれる、地元発の「観光まちづくり」。DNPは地域と連携しながら、さまざまな形で支援を進めています。日本全国の他の自治体においても、こうした課題の解決に次々に挑戦していきたい。鈴木さんの言葉からは、そんな決意が感じられました。

富士山じかん
http://fujisan.sfc.keio.ac.jp
慶應義塾大学SFC研究所、富士吉田市、富士吉田みんなの貯金箱財団、富士吉田市地域おこし協力隊が参加する「富士山じかんプロジェクト」がリリースしたアプリ。DNPが慶應義塾大学SFC研究所の監修のもと開発した、地域の魅力や資源を発信することで街に訪れる人の“まちなか回遊”を促進するシステムをベースに開発されています。

富士山登山スタンプラリー|富士山じかん
http://fujisan.sfc.keio.ac.jp/doc/stamprally2015.pdf

地域活性化を支援する「まちなか回遊アプリ作成サービス」|DNPニュースリリース
http://www.dnp.co.jp/news/10113163_2482.html

DNP 大日本印刷は、皆さまが暮らす地域の未来をよりよいものにするために、 地域の魅力づくりのお手伝いをしています。ぜひご相談ください。

 

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