Project403Dデジタル化で、作品鑑賞は「見る+触る」=「体感」になる

BnF × DNP ミュージアムラボ
フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展

2016年3月3日更新

はじめに

デジタルアーカイブで広がる鑑賞体験

近年、美術作品や工芸品等の文化財や、学術資料を、電子的に保存・継承する「デジタルアーカイブ」が国内外で注目されています。博物館や美術館などの収蔵品のデジタル化は、保存、維持、修復だけでなく、展示や鑑賞にも有効な手段であるとの認識が広まってきています。

デジタル化することで、作品の解説等を付与することができたり、作品を細部まで見ることができたり、新たな鑑賞の体験が可能になります。高精細な3Dデジタルデータによりインターネットを通じて世界中の文化財の情報にアクセスし、学んだり、楽しんだりすることもできる未来もそう遠くはなさそうです。

今回、フランス国立図書館が所蔵する地球儀・天球儀を、高精細3Dデジタル化し、そのデータを活用した展覧会が開催されると聞き、その準備の様子を取材しました。

活動内容

フランス国立図書館のデジタルアーカイブプロジェクト

『体感する地球儀・天球儀展』は、DNP五反田ビルで2016年2月19日より開催。フランス国立図書館(Bibliothèque nationale de France 以下:BnF)所蔵の11~19世紀の地球儀・天球儀 55個を高精細3Dデジタル化するプロジェクトにDNPが携わったことから、この展覧会が実現することになりました。

BnFでは、11世紀~20世紀初頭の地球儀・天球儀200点を所蔵しており、芸術的・資料的価値が高いものの、立体であるためデジタル化は難しいと考えていました。今回、DNPのサポートを得て55個を高精細3Dデジタル化し、電子図書館ガリカ(Gallica)で公開することを決定。より広く資料を公開することを目的としたこのWEBサイトには、すでに300万点以上もの所蔵品のデジタルデータが掲載されていますが、3Dデジタルデータとして公開されるのは、今回が初めてです。

DNPは、デジタル技術を活用してルーヴル美術館の作品の新しい鑑賞手法を開発するプロジェクト(ルーヴル - DNP ミュージアムラボ)を2006年より手掛け、ルーヴル美術館にデジタル鑑賞システムを導入しています。今回のBnFのプロジェクトは、その実績を評価され、協力することになったものです。

DNPは、今回のプロジェクト用に、形状・色ともに精度の高い情報を得られる撮影システムを開発。フランスのBnFで地球儀・天球儀を高精細で撮影し、そのデータを東京へ持ち帰りました。独自のカラーマネジメント技術を活用し、BnFも納得するレベルで、リアルな形状・色の再現を可能にしました。

3Dデータから世界を読み解く!?

『体感する地球儀・天球儀展』は、高精細3Dデータを活用したデジタルコンテンツと実物の地球儀・天球儀の両方が鑑賞できる、新たな試みの展覧会。地球儀・天球儀をテーマにした展覧会は余りなじみがありませんが、どのようなものなのでしょう?

地球儀・天球儀は、当時の世界観や思想、時には想像も反映されたもので、一対で作られているものもあります。ルネサンス期の肖像画には、しばしばこれらが描かれているものがあり、知恵や知識の象徴でもあったようです。

時代や地域によっても異なる地球儀・天球儀を、その実物作品とともに、高精細3Dデータを活用して鑑賞することで、当時の世界の捉え方を発見してもらいたい、というのが、この展覧会のテーマです。

展覧会の準備は、プロジェクト始動後、テレビ会議やメールを通じて、さまざまな情報をやりとりしながら進められました。そして2015年秋、DNPにBnFの学芸員であるフランソワさん、クレールさんを招き、コンテンツや、地球儀・天球儀の展示方法などについてディスカッションが行われました。

じっくり見ることから新たな発見を

まだ内装工事中の展示室に入ると、ケースには地球儀・天球儀の模型が並んでいます。

展示の順路と、歴史的背景やそれぞれの球儀の関連性を考慮し、フランソワさん、クレールさんとDNPが話し合いながら、どのケースにどの球儀を展示するかを決めていきます。また、壁面や展示台の色、照明の色や明るさについても、意見を交わしながら確認していきます。

展示作品(前期)には、オランダの巨匠フェルメールの名作「地理学者」「天文学者」に描かれたものもあるとのこと。大注目です!

ケースの傍らに設置されるタッチパネルディスプレイでは、高精細3Dデジタルデータを拡大して、地球儀・天球儀の細かい部分まで見ることができます。

実物の地球儀・天球儀と見比べて楽しめるように、一つの球儀に対して4Kの高画質タッチパネルディスプレイを1台ずつ用意し、作品の近くに設置します。作品保全のため貴重な実物には触れることができませんが、タッチパネルディスプレイではさまざまな角度から見ることも可能です。これも、デジタル化したからこそ実現できること。

タッチパネルディスプレイに触れて、画面上で地球儀をくるくる回したり、拡大したりして見ていると、表面の凹凸や、描かれている日本列島の形、そして想像上の海の生き物などについてクレールさんから見所情報の提供が。そのたびに、画面を拡大して見入ったり、話が盛り上がったり。新たな発見を楽しむ様子がありました。一方で、「ずっと見続けてしまいそう」という意見も。限られたスペースの中で、見学者に混雑のストレスを感じさせないよう、どう情報を提供するかも、コンテンツを企画するうえでは考えるべきポイントです。

天球儀の中に入る?

頭部に映像表示装置を装着することで、映し出される仮想空間に入り込む感覚を楽しめる、ヘッドマウントディスプレイを使ったコンテンツも予定されています。

天球儀は、その中心に地球があるという構成(もしくは想定)で作られています。地球儀が地形や水陸分布、経緯度を表しているように、天球儀は、地球を取り巻く空を一つの球に見立て、星や星座、赤道や黄道などを描き表した模型。天球を外側から見た形となり、地上から仰ぎ見る星座の形や相互配置とは裏返しになっています。

ヘッドマウントディスプレイのコンテンツでは、自ら天球儀の中に入って、360度の視界で星空を観察することができます。天球儀が作成された当時の星空を体験する、なんともロマンチックな展示です。

ヘッドマウントディスプレイを装着して首を動かすと、見える星空の位置もそれに合わせて変わります。より没入する感覚を体験してもらうために、来場者にヘッドホンを装着してもらい、音声ガイダンスや効果音での誘導も検討しています。

より広く伝えるために

展覧会を通して「地球儀・天球儀についての意味や歴史的価値といった『情報』を、できるだけたくさん伝えたい」、「貴重な展示物をじっくりと見たり、デジタルコンテンツで楽しい『体験』をしてほしい」というのが、BnFとDNPの共通の願い。

今回ディスカッションを行ったことで、歴史的に価値のある貴重な資料を大切に保存するだけでなく、広く人々に知ってほしいという思いをあらためて共有することができたのが、何よりの成果と言えるでしょう。

BnFの学芸員 フランソワさんは、次のように語っています。

「BnFは、以前からずっと地球儀・天球儀を3Dデジタル化したいと思っていました。しかし、技術的に時期尚早であったり、良いパートナーが見つからなかったりしたため、実現に至っていませんでした。DNPは技術力の高さはもちろん、文化財を広く紹介するプロジェクトに取り組んできた実績のある企業であり、ノウハウを持っています。そういった点を重要視して、パートナーに選びました」。

また、同じくBnFの学芸員 クレールさんは、「DNPが以前ルーヴル美術館で新しいスタイルでの展示を行った経験があることも、パートナーとして理想的でした。実際に展示スペースを見て、私たちの地球儀・天球儀をDNPの技術でいかに美しく見せられるか、これまでの経験をどのように活かしていただけるか、楽しみになりました」と、この展覧会に寄せる期待を聞かせてくれました。

3Dデジタル化の技術が、貴重な文化財や歴史的資料を身近な存在に変える

プロジェクトマネージャーであるDNPの高梨さんは、今回のような3Dデジタル化の技術や展示システムを、他の美術館・博物館にも提案していきたいと話します。

「今回展示する地球儀・天球儀もそうですが、立体物を鑑賞するためには、3Dデジタル化という技術はとても有効だと考えています。今後もさらに、歴史的価値のある立体的な文化財と資料を3Dデジタル化することで、身近なものとして鑑賞できるようなプロジェクトを推進していきたいと思います。また、データを有効活用したコンテンツを商品化することで、新たなビジネスにもつなげていきたいと考えています」。

未来には、インターネットを通じて世界中の博物館や美術館の所蔵品をデジタルデータで閲覧することはもちろん、「触る」「裏側をのぞく」といった、新しい鑑賞スタイルがあたりまえになっているかもしれません。

BnF×DNPミュージアムラボ
フランス国立図書館 体感する地球儀・天球儀展

前期 2016年2月19日―5月22日
後期 2016年6月3日―9月4日

http://www.museumlab.jp/bnf/

Gallica - Bibliothèque nationale de France(フランス国立図書館 電子図書館「ガリカ」)※フランス語
http://gallica.bnf.fr/
ニュースリリース|大日本印刷とフランス国立図書館 2/19~9/4に「体感する地球儀・天球儀展」を開催
http://www.dnp.co.jp/news/10112422_2482.html
ルーヴル – DNPミュージアムラボ
http://www.museumlab.jp/
製品・サービス|フローテーブル
http://www.dnp.co.jp/cio/solution/detail/10099334_5309.html
製品・サービス|ヒストリーウォール
http://www.dnp.co.jp/cio/solution/detail/10099333_5309.html

 

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